配偶者居住権(その2)

相続のときに配偶者を保護する制度(2/2)

Q:
『前回に解説のあった「配偶者居住権」が成立する要件などについて詳しく教えてください。』

A:

 まずおさらいをしますと、配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまでまたは一定の期間、無償で居住することができる権利です。

 配偶者居住権が成立するための要件は以下のとおりです。
1.残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること
2.配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなったときに居住していたこと
3.①遺産分割、②遺贈、③死因贈与、④家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
これらの要件をすべて満たせば配偶者居住権は権利として発生します。

 
 そして、配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要となります。登記は配偶者(登記権利者)と居住建物の所有者(登記義務者)とが共同で申請することになります。ただし、亡くなった人が建物を配偶者以外と共有で登記していた場合は、そもそも配偶者居住権の対象とならないことに注意が必要です。

 
 また、「配偶者短期居住権」というものもあります。これは、残された配偶者が、亡くなった人の所有する建物に居住していた場合、遺産分割協議がまとまるまでか、協議が早くまとまった場合でも被相続人が亡くなってから6ヶ月間は無償で建物に住み続けられる権利です。配偶者居住権と違って登記はできませんが、遺産分割協議が長引いたときも配偶者がこの権利を行使することで最低6ヶ月間は自宅に住み続けることができます。

 
 最後に、配偶者居住権を設定するかどうかはあくまで任意のため、円満な相続ができそうなら敢えて設定しておく必要はないとも考えられます。しかし、相続人の間で自宅の相続を巡ってトラブルになり、配偶者が家から出なければならないケースも想定されますので、いざというときの選択肢として知識を持っておくことは大切です。

 ただし、居住権の価値の評価など税金面において複雑な部分もあるため、実際に利用する際は専門家に相談することをお勧めします。
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