配偶者居住権(その1)

相続のときに配偶者を保護する制度(1/2)

Q:
『法律が変わり、配偶者のための「配偶者居住権」というものが新たにできたと聞きましたが、どういったものでしょうか?』

A:

 配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまでまたは一定の期間、無償で居住することができる権利です。夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者の居住権を保護するため、令和2年4月1日以降に発生した相続から新たに権利として認められました。

 では、具体例を出して法律改正前と比べてみましょう。仮に夫が亡くなったとして、相続人は妻と子一人であり、遺産として2000万円の建物(住居)と3000万円の現金があるとします。妻と子の法定相続分は2分の1ずつであるため、遺産の総額5000万円の2分の1(2500万円)ずつ相続する前提で考えます。

 この場合、もし妻が建物の所有権を相続すると、それだけで2000万円になり、現金は500万円しか得られず、住む場所はあるけれども生活費に不安が残るということになります。
 
 そこで、法律の改正後は建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え、残された配偶者は建物の所有権を持っていなくても、一定の要件の下、「居住権」を取得することで、亡くなった人が所有していた建物に引き続き住み続けられるようにしました。同じ例で考えてみますと、2000万円の住居の価値を1000万円の所有権と1000万円の居住権に分けます。そうすると、建物の所有権を子が相続したとしても、妻としては1000万円の居住権を取得し、かつ1500万円の現金を相続することもできるため、建物に住み続けながら十分な生活費も得られるという結果となります。

 
 ただし、この配偶者居住権が成立するためには要件があり、また第三者に対抗するためには登記も必要となりますので、次回はその部分をお伝えいたします。
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